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『社会変革のためのシステム思考実践ガイド――共に解決策を見出し、コレクティブ・インパクトを創造する』を頂戴して

昨晩、ご恵贈いただいた本に感謝しつつ目を通していると図4-1相互作用マップ(p.93)が目に飛び込んできた。いわゆる恐怖の悪循環である。

【図4-1相互作用マップ】
「Aが考える」例:マネジャー「部下は気にしない」→「Aが行動する」例:マネジャー<意思決定し、部下に命令する>→「Bが考える」例:部下「ただ指示を待つさ、どうせマネジャーはわれわれの意見なんて聞いてはくれないのだから」→「Bが行動する」例:部下<参加の度合いが減る>→「Aが考える」例:マネジャー「部下は気にしない」…

まさに悪循環である。自戒、自戒と帰宅して、新聞夕刊を開くと誰もが一目置く岩出監督(帝京大学ラグビー部)のインタビューが掲載されていた。

***
――最初の10年は勝てなかったそうですね。
 「その頃はトップダウンで厳しく指導していました。練習方法から生活のあり方まで、だらしない部分を正そうとしていたので、学生としては居心地が悪かったのだと思います。彼らなりにやってきたことと、私が必要と思うレベルとのギャップもあり、チームの一体感が持てず、一部の人間だけが頑張る組織になっていた」
 ――変えようとしたきっかけは。
 「10年間勝てなかったことも理由ですし、下級生が不満を持っている様子も感じていました。ある試合で『負ければいいのに』とつぶやいた学生もいた。トップダウンの体育会組織の体質が、そういうさみしい発言をさせてしまったのだと思います。監督が無理やり選手を成長させようとすると、結局は指示待ちになる。一人ひとりが自ら経験から学習して成長できるようにすれば、自律的に成長する組織になるんじゃないかと気づきました」
(帝京大学ラグビー部岩出雅之監督(上)トップダウンが敗因になる(私のリーダー論)2018/11/15 日本経済新聞 夕刊 2ページ)
***

これが前述した恐怖の悪循環の実例である。あの岩出監督をして、最初の10年は勝てず、やり方を変えて今があるのだという。知らない人のために、「あの」岩出監督と言わせる実績は大学ラグビー8連覇ばかりでなく、現在World Rugby Ranking Top 11に入るJapanのメンバーの中で帝京大学出身者が顕著であることからも窺える。たとえば、今度の土曜のイングランド戦の試合登録メンバー23名の出身校(大学であったり高校であったり)を見ると、帝京大学が6名、それ以外は各学校が1名づつなのだ。また、この23名を若いほうから約半分の11名とると、その内の5名が帝京大学ラグビー部出身者だ。27歳の中村亮土は2連覇~5連覇までのメンバーであり5連覇の主将、流(26歳、6連覇の主将)、坂手(25歳、7連覇の主将)、松田(25歳、7連覇)、姫野(24歳、7連覇)と続く。もちろん彼らは高校時代から有名な選手であるのだが、花園で有名になった選手は数多くいる。その中で大学で伸び、社会人で伸びる「伸びしろ」感がたまらない。

というようなことも考えさせるきっかけになる本である。20代には図に注意しながら速読をお勧め、30代以上で大学で学問(つまり、学んで質問作って問いかけることを)しなかった人には熟読をお勧め。

以下は蛇足メモ。
  1. 帝京は2018年度は過年度に比べてやや弱いような気がする。他のチームがやや強いのか、どうなのか。
  2. 日本代表への選考に大学選手権八連覇が影響している可能性がある。強い選手がいるから勝ったのではなく、勝ったから強い選手とみなされているという可能性だ。しかし、大学日本一と社会人日本一の圧倒的な実力差を考えると、大学で日本一になっただけでは社会人で活躍できないし、日本代表に入れる保証はない。やはり、勝つ組織としての個人に埋め込まれる自学自習性が大学卒業後も彼らを伸ばす点が大きいのだと思う。
  3. 本書は研究者が書くような参考文献でのペダンティックさが低い。たとえばマクロ経済学は「どマクロ」でもsystems thinkingだと思うが、そういう参照がほぼ無いところが興味深い。feedback loopといえば経済学の特徴だと思っていたが、そういう共通認識が低いような気がする。
  4. こういうstory lineはこういう図で書けるという対応関係が本書の魅力だと思う。
  5. 日本国内では、こういう本の助けを借りずに同様なソリューションを目指す話し合いが多く行われているはずだ。そういう話し合いが本書が追加されることで改善するのかに興味がある。

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