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ベイザーマン&ムーア『行動意思決定論:バイアスの罠』

ベイザーマン&ムーア『行動意思決定論:バイアスの罠』(白桃書房、2011年)
原題はJudgement in Managerial Decision Making
この本は、典型的な授業テキストであり、膨大な文献を読みながら、お話を聞く(そして議論する)ことを想定されて作られている。もちろん、本書はその膨大な文献のエッセンスを抽出している。
「Dawes(1988)は、知識を得るにあたって経験に依存することには難点があると強く主張している。そして、ベンジャミン・フランクリンの有名な引用句の「経験は高価な(dear)教師である」は、しばしば「経験は最良の教師である」を意味すると誤解されていると指摘する。実はフランクリンは「高価な(dear)」を「高くつく(expensive)」の同意語として使っていた。しかもその引用句は「ところが愚か者はそれからしか学ぼうとしない」と続くのである。」(p.310)
「必要なのは、自己の意思決定プロセスを自覚し絶え間なく監視することである」(p.310)
と言っている。
類比的推論(analogical reasoning)がバイアス削減に効果がある(p.316)。同じふたつの演習を課して、そのふたつがどのように関連しているかを説明させると、バイアスの補正が格段に進む。比較をすることで複数の実例の類似性が浮かび上がり、またそれらの実例に共通した構造が見えやすくなる。
analogical training rather than case-based trainingがキーワードですね。
「外部者の視点のほうが過去の意思決定から得られた関連データをよく取り込んでいるのに、依然として私達は内部者の視点を信じ、それに沿って行動する傾向がある。」(p.320)

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エイヴェント『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』

制度よりソーシャル・キャピタルを重視している。いろいろな議論を手際よくまとめている。興味深かったのは二点。
第一、ボーモルのコスト病(p.93)
第二。『経済史家ジョエル・モキールは、工場制工業との競争に敗れて家内工業が衰退したことで、家庭の構造が変わったと述べている。それまでは家内生産と子どもの養育および教育が一緒にできたが、働く場所が変わったために教育の責任が会社と社会に負わされるようになった。』(p.176)
Joel Mokyr

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生涯教育についての英誌Economistによる特別報告

Lifelong learning
Discover the global trends impacting your career
Feb 6th 2018
General Assemblyの事例から始まる。
米国データ:
Beaudry et al. (2016)は90年代後半から00年頃のcognitive intensityのpeakと00年代の急下降を指摘(p.2)。
技能労働者は非技能労働者の職業に侵食。他方、給料の高い仕事はcoding能力が必要(p.2)。
会社のほうも労働者に投資する気はなくなっている、もしくは何に投資したらいいかわからなくなっているので、労働者は自分で自分に投資しなくてはならない(p.3)。それで、Reboot camp。「デザイン思考」(p.3)
Deming (2017)は給料の高い仕事は「social skills」が必要と指摘(p.4)。というのは、社会的接触(social interaction)はなかなかautomationしにくい。もっとも給料が高いのは数学ができて、social skillsが高い人。次点は、数学低スコア+高社会スキル、その次が数学高スコア+低社会スキル。雑談だが、Deming (2017)は冒頭にAdam SmithのMoral Sentimentsを引用していて、時代が変わったのだなと思わせる。
Deming (2017) THE GROWING IMPORTANCE OF SOCIAL SKILLS IN THE LABOR MARKET
MOOCS。2012年がピークでハイプだった。生き残るところは、雇用に焦点。問題は二つ。一つは費用、お金だけじゃなくて働きながら生活しながらという費用が高い。そこで、MOOCSは仕事に直結したlearningを細切れに提供する。6分ビデオが標準。参照すべきは音楽産業(p.6)。
キャンパス+tenured facultyシステムは固定費用が高くて、長時間モデルになってしまう(p.7)。もう一つのMOOCSの問題はcredentials。digital badgesでless formal achievementを評価する。Nanodegreeともいう。Degreed社はcredentialsの基準を提供しようとしている。
雑談:各大学が提供しているポイント・システムの基準評価ができると面白いかもね。
Pathway dependency(当然、path dependencyのもじり)。
Bootcamp approach(p.8)。Generation (McKinsey Social Initiative)は企業に入って、重要なスキルを学び、それを教え込むキャンプを創り、人を訓練する。
脱線:Generationのメキシコ成功例は、UNAMのAdministration卒業のErickさん、Generationを経てWalmartのcasherになれたそう。Santiago Levyは国の物的・人的投資モデルと社会保障システムのミスマッチを特筆するが、そもそも人的投資のやり方が大きく間違っているような気がします。
https://www.generation.org/story/erick-mexico/
職業教育モデルだと仕事にはつけるが長くはもたない(p.8)。変化への対応力がないかもと示唆。デンマーク、ドイツ、スイス。
脱線:ヘックマンの高校卒業についてのコメント。試験での高校卒業資格と、真の高校卒業とでは違うらしい。このあたりが、細切れMOOCもしくはブートキャンプ・モデルとどう交錯するか興味深い。おそらく、ブートキャンプ・モデルは雇用者目線から代替物を提供しようとしている。それが、労働者の変化対応力につながっているかは疑問。
現在できかかっている生涯教育システムは不平等削減には効かない(p.9)。
Adult's problem-solving skills using a computerのグラフ(p.9)。日本はNoneの大きさが目立つ。
生涯学習を実施する国家の一例としてシンガポールのSkills-Future Initiative(p.10)。Lifelong learningというよりcontinuous reskillingか(p.10)。

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OECD Economic Surveys: Costa Rica 2018

現在のコスタリカ経済の理解に、OECD Economic Surveys: Costa Rica 2018は有用。一枚目もを書きました。「2018822.pdf」をダウンロード

岐路に立つコスタリカ』を書いている時は、やっぱり発展途上国の優等生たるコスタリカという基準で接していたように思う(もちろん、ペーパーとはたぶん無関係)。今回はOECD加盟候補国ということで接する基準が変わったように思った。

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Dani Rodrik "Rescuing Economics from Neoliberalism"

Dani Rodrik "Rescuing Economics from Neoliberalism"

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依存

動きとしての開発
佐 藤   仁
競争関係にあるとみるか、依存に基づく協力関係にあるとみるか(p.657)
依存関係と従属関係は別である。
『依存関係が無意識化され、一方的な従属関係になると』(p.661)
依存は無意識の関係、協力は意図的な行為(p.661)
特定の次元における依存が、他の領域まで覆いつくすと、それは依存を越えた「支配」に転じ、自由や尊厳といった他の価値を侵してしまう(p.664)
技術や制度の充実が依存を無意識化させているのである。(p.664)
【コメント】
独立した個人というより、自分及び自分の所有物を勝手に処分(dispose)できる個人。多くの依存先が自立をつくりあげるという論理が経済学に特徴的。それはハーシュマンの処女作にこそ顕著。
dependableという言葉は良い意味がある。
【関連文献】
松井彰彦
『市場って何だろう』
『自立するためには依存先を増やすことが大切で、その依存先を提供してくれるのが市場だ。』(p.15)
『貨幣の本質は記録や記憶を代替している点にある。』(p.25)
本当かはわからない。なぜなら歴史的に文字の最初(の一つ)はメソポタミア文明で売買記録なのだ。そもそも、共同体から都市へというのも<神話>に近い。

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ハイチ・ドミニカ共和国とのアフリカ比較

国際開発研究2018年6月の高橋基樹論考p.24を読みながら、アフリカとハイチ・ドミニカ共和国を比べると興味深い。高橋はアフリカのrootlessnessを慣習経済が指令経済に移行しなかった理由として指摘している。ハイチ・ドミニカ共和国はアフリカよりもrootlessであり、特にドミニカ共和国のほうがハイチよりrootlessである。しかし、ドミニカ共和国はアフリカの多くの国よりも発展しているし、ハイチよりも発展している。このことはrootlessnessは発展に影響を与えるが、その特徴は複雑なものであることを表している。 あとこれ。 http://www.hoseikeizaigakubugakkai.com/shirin/

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