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授業後の学生への情報提供

2011秋 現代国際社会論 履修者の皆さんへ:
(本メールはBCCで送ってます)

一学期間お疲れさまでした。月曜2時限の
現代国際社会論を担当した久松佳彰です。
以下は、テスト時にお配りすべきだった本と映画の紹介を
するメールです。

私は専門が、中南米経済なので、経済学と中南米地域の
知識に偏ってますが、そこは他の(教員などからの)知識と
バランスを取ってください。駒場時代に、ちゃんと教養
(the state of arts and sciences)を身につけられることを
期待しています。

【本】

1)まず、テストでブラジルの混血問題に関心をもった
という方がいました。これについては、

エドワード E テルズ『ブラジルの人種的不平等―多人種国家における偏見と差別の構造―』 (世界人権問題叢書74) (明石書店、2011年)

が新しいのでいいでしょう。図書館などで手に取ってください。

2)開発については、以下はPoor Economicsと並ぶ基礎文献です。

ウィリアム・イースタリー『エコノミスト 南の貧困と闘う』(東洋経済新報社、2003年)
ジェフリー・サックス『貧困の終焉―2025年までに世界を変える』(早川書房 、2006年)
ポール・コリアー『最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?』(日経BP社、2008年)

この三つとPoor Economicsを最低読んでおけば、大学2年までの経済開発の
知識としてはギリギリ大丈夫です。そこから進むにはIntermediate Microeconomicsが必要なので回り道してください。ご存じでしょうが、経済学部の澤田康幸先生は日本の開発経済学で一番なのでチェックしておいてください。

3)暴力については、これをぜひ読んでください。

アラン・B・クルーガー『テロの経済学』(東洋経済新報社、2008年)

ちなみにアマゾンでのレビューは信用せず、自分で読んでください。
クルーガーは、最近話題になった『華麗なるギャツビー曲線』
(例えば、日経2012/02/06 経済教室)の命名者です。
【所得分配と所得の世代間の固定化との相関関係】

http://www.whitehouse.gov/blog/2012/01/12/chairman-alan-krueger-discusses-rise-and-consequences-inequality-center-american-pro

4)応用ミクロについてのここ20年のリサーチの一部として、これを寝っ転がって読んでください。

スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー『ヤバい経済学 [増補改訂版]』(東洋経済新報社、2007年)

たとえば日本の大相撲の八百長について、こういう研究結果が大マスコミで取り上げられたことは私の知る限り、一度もありませんでした。タブーもあると思いますが、たぶん彼らは統計を読めないのでしょう。

5)そこで大マスコミ、特に新聞については、最近出たこれはmust-read bookです。

牧野 洋『官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪』(講談社、2012年)

皆さんは、大学の時から調査報道と、欧米新聞の優れたコラムニストを読むようにしてください。これが日本のメディアでは決定的に欠けているので、素養として他の先進国環境と
太刀打ちできません。

お勧めとして、デイヴィッド ハルバースタムの『ベスト・アンド・ブライテスト』を挙げておきます。もちろん、ウッドワード&バーンスタインの『大統領の陰謀』を映画を見てから読んでも構いません。

コラムニストとしては、私はNY Timesのポール・クルーグマンを挙げておきます。

http://topics.nytimes.com/top/opinion/editorialsandoped/oped/columnists/paulkrugman/index.html

6)海外報道の構造としては、これをお勧めします。日本も一緒ですが、更に悪いのは牧野で補足してください。

ヨリス・ライエンダイク『こうして世界は誤解する』(英治出版、2011年)

7)教育と開発については、文学部社会学科で3・4年ゼミをやっている中村雄祐さんのこれを読んでください。認知科学の基礎知識が必要なことがわかります。

中村雄祐『生きるための読み書き』(みすず書房、2009年)

8)経済学で言うと、神経経済学と行動経済学が最先端として大事です。

神経経済学については、
Paul W. Glimcher, Foundations of Neuroeconomic Analysis, (Oxford, 2011)
です。これは中級ミクロをやることになる人(経済学部進学者)にお勧めします。

行動経済学については、
セイラー&サンスティーン『実戦行動経済学』(日経BP社、2009年)
こちらは教養です。

*番外*
折角なので、2000年代の私が関係した仕事の一部を紹介しておきます。

小池 康弘 (編集)『現代中米・カリブを読む―政治・経済・国際関係』 (山川出版社、2008年)
に収められた小論、久松佳彰『グアテマラの地域開発と国際協力』
そして、
関 雄二、中村 雄祐、狐崎 知己(編著)『グアテマラ内戦後 人間の安全保障の挑戦』 (明石書店、2009年)
の序章、3章、4章、5章、追記です。

【映画】

9)今年のアカデミー賞候補は、世界的な視点をもったものがないようです。
但し、The Tsunami and the Cherry Blossomはshort filmですから
あまり大したことはないと個人的には思いますが、見てもいいですね。

http://oscar.go.com/nominees

10)ストリート・チルドレンの古典

ブニュエル『忘れられた人々 los olvidados』

11)インドの赤線街、子供、カメラ

ロス・カウフマン+ザナ・ブリスキ『未来を写した子どもたち』

12)日本の選挙

想田和弘『選挙』
合わせてこれも読んでください。
山内 和彦『自民党で選挙と議員をやりました』 (角川SSC新書)

13)構造を語ってしまったので批判的に見なければならない映画
(映画は構造を語るのは不得意だ、と私は個人的に思います)

フーベルト・ザウパー『ダーウィンの悪夢』
必ずこれを読んでください。
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Periodicals/Africa/pdf/2007_09_09.pdf

このぐらいお勧めしておけば、春休みはいいでしょう。

また、皆さんがこれは読むべき・見るべきというものがあれば、教えてください。楽しみにしています。

では、皆さんが充実した春休みを送られることを期待しています。

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