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『危機の三日間』

 このまま鎮静化することを強く願うが、気のついた点をメモする。TEPCOのweb siteに掲示されている放射線量モニタリングの報告フォーマットが16日から17日にかけて変更されている。

 もちろん同じ時系列式なのだが、16日までは古い事象から新しい事象に並べられている。つまり、普通の時系列である。ところが17日になると新しい事象から古い事象に並べ替えられている。前者では、最新のデータが最後に来るという問題がある。後者は、最初に最新のデータが来るのでupdateしやすい。

 16日といえば、大量の放射能拡散が観察された日である(下図参照)。SDFのヘリコプターによる調査があり、まずは放水を断念した日である。翌日の17日に実際の放水があり、大臣は『きょう、地上からの放水を決断できないなかで、政府の災害対策本部が、冷却作業を行うにはきょうが限度だと判断した。』という物議を醸した有名な発言があった。また、ヘリコプターから目視が行われ、最初に対処すべきはUnit 3なのかUnit 4なのかという重大な決定があった日である。

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 私が憶測するに、データの並べ方の違いは、chain of commandに実質的な意味で何か変化があったことを示唆しているのだと思う。国事はremote controlである。chain of commandを実質的に握る者が、もっとも見やすい形にフォーマットを変えるのは当然だ。傍証として、福島第二についても同じように並べ方が最新データから古いデータへと並べ方が変更されている。つまり、両データを監督するchain of commandによる変更だと推測できる。

 17日の変化はデータの計測場所にも表れる。16日はほとんど正門でデータが採られている。17日になると、正門から体育館脇に移り、さらには事務本館北、そして正門、西門、また事務本館北へとポストが変更されている。これは、あたかも実質的なchain of commandを掌握した誰かが、もう一度データ採取方法自体を精査しているように見える。そして、データは事務本館北と西門の両箇所で採られることになる。

 なぜこの二つの地点なのか。データを一見すると、西門は数値が低く、事務本館北は数値が高い。おそらく、本丸は事務本館北であろう。西門は持続的にデータをとるため、また、他の車両に邪魔にならない場所なのではないだろうか。これは、発電所敷地の地図とがれき状況を判断すればだいたいはわかるはずだ。

 報道では、正門は数値が高いため、西門に比べて安全上の理由で...と報じられているが、たぶんそれだけが理由ではないと思う。

 西門から事務本館北は10分か20分で到着できる。おそらくモニタリング・カーは一台しかないので、的確に本丸の事務本館北に行ける場所が大事である。おそらく、この点からも西門が選ばれたのではないだろうか。西門と比べると正門はあまり意味をもたないのだろう。もしくは他の車両の搬入に邪魔になるのかもしれない。でも、17日午前11時00分と10分には正門に戻っている。この理由は、おそらく16日との変化を見ているのであろう。これを確認した後、17日にはもう正門に戻らない。

 (ちなみに消防庁への派遣要請も17日に行われている。すでに消防庁は16日に訓練をしているが、この時点では敷地がより移動可能との不正確な情報をもとに訓練が行われており、16日までのコミュニケーションが「何かはあったとしても、十分ではなかったこと」を窺わせる。)

 興味深いのは18日になると、古いデータから新しいデータという並べ方のレポートが掲載されている。この並べ方のデータはlook backして漏れがないかを調べるには重要なフォーマットである。なお、計測場所は17日午後8時40分から18日午後1時半まで、西門である。これは各種機関が入っていて、それぞれ計測するので、邪魔にならないように西門で待機しているのだと憶測することもできる。

 18日午後1時50分にはモニタリングカーは事務本館北に戻る。これは17日午後1時40分と午後2時に同地で計測した数字の変化を計測しに行ったものと考えられる。同時にUnit 3での放水による変化をモニタリングしに行ったものと考えられる。前日と比べて数字がそれなりに下がったことを見て、chain of commandは何を思っただろうか。しかし、数字は午後3時半頃に上がり始める。しかし、東電の記者会見では:

東電 放水後に放射線量が微減
東京電力福島事務所は午後4時すぎに記者会見し、福島第一原子力発電所の3号機で行われた自衛隊などによる使用済み燃料プールへの放水のあと、原発の敷地内の放射線の量がわずかに下がっていることを明らかにしました。
福島第一原子力発電所3号機の使用済み燃料プールの冷却のため、自衛隊による放水作業が、午後1時55分ごろから午後2時38分にかけて、あわせて6台の消防車で行われ、アメリカ軍の消防車両を使って行われた東京電力の放水作業も午後2時45分に終了しました。
東京電力福島事務所によりますと、3号機のおよそ500メートル北西にある事務本館の北側の放射線の量は自衛隊の放水が始まる前の午後1時50分には1時間当たり3484マイクロシーベルトだったのに対し、放水が終わったあとの午後2時50分には1時間当たり3339マイクロシーベルトと、わずかに下がっていたということです。
これについて、東京電力福島事務所は、変化としては少ないので、今の段階で効果を評価することはできず、今後、詳しく分析することにしています。
3月18日 17:05更新 (NHK)

と述べる。実は、午後4時00分には4485だった。数字は午後5時過ぎに5000台に上がる。この間なされた意思決定は、消防庁による長時間の放水優先(SDFの夜間放水は中止)である。モニタリングカーは午後8時10分に西門に戻る。前日17日には午後7時10分まで事務本館北にいたので、前日との変化を確認したと思われる。結局、数字は前日よりやや高め、ただし上昇傾向はないということを確認した。

 ここでchain of commandに与えられた一つの質問は18日午後5時@事務本館北での数値上昇の理由であろう。私には仮説を提示することもできない。せいぜい言えるのは、あまりSDFの放水が効果があったとは言えるのか言えないのかよくわからないというところだ。さて、18日午後8時10分に西門に戻ると、数字は前日よりかなり高かった。全く予断は許されない。

 午後11時30分にモニタリングカーは事務本館北に戻る。前日はこの時間に事務本館北に行っていないので、西門での数値低下を受けて、事務本館北でもそれが確認されるか確かめに行ったものだと想像しよう。このチェックは翌19日午前1時50分までで終了し、数値の下降傾向を確認している。午前2時に西門に戻る。数字は前日よりやや高め。

 19日午前7時30分において数値は西門で288.9、前日は同地で271.4、依然として前日より高い。このまま西門でチェック中。ところどころ、830.8(午前8時10分)、657.3(午前9時40分)と高い数字がでるものの、午前11時で322.6と前日よりやや高め。午前11時40分にモニタリングカーは事務本館北に出る。ほぼ前日と変わらない数字。

 小規模の注水ではあまり変化がでないということだろうか。午前0時の消防庁の注水も、あまり変化は見られなかった。午後2時より消防庁の長時間注水。モニタリングカーはこれをチェックしに行ったものと思われる。

 なお、19日朝にはSDFのヘリコプターによる温度確認があった。記者会見はこのように報道されている。

防衛相 放水で冷却に一定効果
北澤防衛大臣は防衛省で記者会見し、19日朝、福島第一原子力発電所の上空で、自衛隊のヘリコプターを使って、温度を計測した結果、1号機から4号機のそれぞれの表面温度は、暫定値で、いずれも100度以下とみられるとしたうえで、3号機への放水で、使用済み燃料棒の冷却に一定の効果を上げているという認識を示しました。
防衛省は、福島第一原子力発電所の冷却作業の効果を調べるため、19日午前5時45分から、自衛隊のヘリコプターで、上空から赤外線を使って福島第一原発の温度を計測しました。
これについて、北澤防衛大臣は記者会見で、1号機、2号機、3号機、4号機のそれぞれの表面温度は、正確なデータは、さらに分析する必要があるものの、暫定値で、いずれも100度以下とみられることを明らかにしました。
そのうえで、北澤大臣は、今回の計測結果について、「政府の対策本部から、100度以下という数値は、思ったよりも安定しているという見解が得られている」と述べたうえで、菅総理大臣から、詳細な測定と分析をするよう指示されたとして、20日以降も測定を継続する考えを示しました。
また、北澤大臣は、これまでの放水作業について、「使用済み燃料棒が保管されたプールに一定の水量が確保されているとみられる。効果はかなり上がっているのではないか」と述べ、3号機への放水で、使用済み燃料棒の冷却に一定の効果を上げているという認識を示しました。
3月19日 17:45更新 (NHK)

まず大事なのは赤字の部分。つまり、対策本部が「思っていた内容」はより厳しい数字を含んでいたという解釈をすれば、これまでの経過とあてはまることになる。この結果、chain of commandは長時間放水を試すことをより信じることができただろう。ここのチェックがchain of commandの放水への信念を支える。

 数値は下がった。変化が現れ始めるのは午後3時ごろである(下図参照)。

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そして、先ほどの記者会見で青字の発言をすることができたのだ。放水は20日午前3時40分まで続いた。19日午後11時30分の数字は2828、前日同時刻同地の数字は3254。効果があったとみてもよいだろう。モニタリングカーは放水が終わっても残り、午前4時30分までいる。このとき数字は2739。戻って、西門午前4時40分は273.2であり、前日同時刻同地の299.2より低い。

 午前5時50分にモニタリングカーは事務本館北に戻る。数字は2683。以来、ほぼ一貫して数字は下がり続け、午前9時00分現在、2614。これは午前8時20分から始まったSDFによるUnit 4への放水の影響を見るモニタリングであろう。

自衛隊 4号機への放水終了
福島第一原子力発電所4号機の使用済み核燃料を保管するプールを冷却するため、自衛隊は、20日午前、1時間余りにわたって放水を行いました。
自衛隊による放水はこれでいったん終了し、午後からは東京消防庁が4号機に対する放水を行う計画です。
福島第一原子力発電所の3号機と4号機は、使用済み核燃料を保管したプールが冷却できなくなっていて、このままの状態が続くと放射性物質が大量に漏れ出すおそれがあります。
このうち、3号機に対しては、自衛隊と東京消防庁が放水を行いましたが、4号機にはこれまで放水が行われていませんでした。
このため、自衛隊は、早急に冷却を行う必要があるという政府の対策本部の要請を受けて放水活動を行うことを決め、20日午前8時20分から放水を始めました。
放水は、午前9時半ごろまで1時間余りにわたって行われ、自衛隊の消防車10台に東京電力が在日アメリカ軍から借り受けた消防車1台も加わり、あわせて11台の態勢で80トンの水を放水したということです。
放水は、水を建屋の内部に届かせるため、火災などで損傷した屋根や壁の穴に向けて行われ、防衛省によりますと、水は建屋の内部に届いているということです。
4号機に対する自衛隊の放水はこれでいったん終了し、このあと、東京電力による外部電源の復旧工事が行われる予定です。
そして、東京消防庁はこの工事の間に準備を行い、順調に進めば、20日午後6時ごろから21日の朝にかけて連続放水を行う計画だということです。
3月20日 10:00更新 (NHK)

 つまり、Unit 3でわかったこと=長時間放水でないと効果がない、をUnit 4に適用している。SDFのUnit 4放水は、おそらく放水をしても爆発が起きないのかという試験をしているのだろう。

 最後に3点、仮まとめ。第一にpolitical leadership。このoperationのchain of commandはmiddle managementである。political leadershipとは、このchain of commandを任命し、政治的に支えることにある。私の仮説では17日から新しいchain of commandが発足しているが、多少なりとも結果が出たのは19日午後3時である。それまで、一応、political leadershipは耐えられた。

 第二に、chain of commandの中身。筆頭にはほぼ全権を委譲されたmiddle managementが存在しているが、その下に二人いる。一人は、TEPCOの電源回復チームのhead。もう一人は、SDFの放水operationのheadである。当面は、このトロイカ体制が威力を発揮されているように思われる。

 第三に、現場だけではなく、middle managementまでは理屈が立ってきた。このような理屈だった思考をどうやってpublic relationsまで引き上げていけるかが大事な今後の課題である。これは単にFire fightersのpress conferenceが良かった、現場だけが良い、という問題ではない。正しい効果的なpublic relationsにより、the publicが各々のeducated judgementができる方向に行く必要があろう。

(参考文献)

Ibaraki Pref.

NHK

TEPCO

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Comments

確かに、Middle Managementの変化があった可能性を感じさせる展開ですね。いろんな観点からの感想を持ちましたが、一読して、当然というべきか、E. TufteのNASA研究を思い出しました。さらには、これとか:The Challenger launch decision: risky technology, culture, and deviance at NASA (Diane Vaughan)。Vaughanは、確か、ローカルには皆やるべきことをやっていたはずが、、、みたいな結論だったように記憶してますが、Tepcoのただpdfの表をべたべた並べただけ、というPublic Relationsには唖然とします。こういう事には疎いのですが、「原子力災害対策特別措置法第10条第1項の規程」には表現法の規定はないようだし、Tepcoの側でもっとわかりやすいinfographicsはできないものかしら。

Posted by: YN | 2011.03.21 at 11:00 PM

ありがとうございます。今回をなんとか乗り切って、さらに皆さんPublic Relationsが正しくなることを祈ります。

Posted by: ひさまつ | 2011.03.21 at 11:59 PM

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