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岩田一政『デフレとの闘い』

 岩田一政『デフレとの闘い』(日本経済新聞出版社、2010年)。近年ではLaurence H. Meyer, A Term at the Fed: An Insider's View (2004)に優るとも劣らない現代中央銀行の政策担当者の唯一無二の回顧録だと思う。デフレ復活に「流星光底長蛇を逸す」(p.409)と慨嘆する知性を他に知らない。

(補足1)幼少の頃、詩吟をした記憶が蘇ります。Wikipediaより

頼山陽「川中島(不識庵幾山を撃つの図に題す)」
鞭 聲 肅 肅 夜 過 河 (鞭聲肅肅夜河を過る)
曉 見 千 兵 擁 大 牙 (曉に見る千兵の大牙を擁するを)
遺 恨 十 年 磨 一 劍 (遺恨なり十年一劍を磨き)
流 星 光 底 逸 長 蛇 (流星光底に長蛇を逸す)

(補足2)マンデル・モデル(p.44)図1-1の名目金利、実質金利の横線が全て下に1cmほどずれてます。

(補足3)巷間では中原 (2006)や植田 (2005)との比較がなされていると思いますし、これからもなされると思いますが、前者は良質なアマチュアの文章(ゴルフでは時々アマチュアがプロに勝ちます)であり、植田は短すぎます。もちろん、中原は、エコノミスト以外の審議委員は就任時に読むべき鏡です。植田は、政策委員会の議事録が発表されたら比較検討するに値する文書でしょう。そして、審議委員と執行部の仕事にはかなり違いがあることを考えると、忘却の彼方にある藤原作弥 (2003)と比べるべきであり、人事は一人一人ではなくその繋がりで見るのであるとしたら、政府なり日銀の識見が知れる。

(補足4)裁判官が良質なtechnocratでなければならないのと同じ意味で、経済政策のpolicy makerはtechnocratである必要があろう。昔、森嶋道夫が東京大学教養学部教養学科について指摘していたことを思い出す。

(補足5)注目すべき卓見の一つは、『生産年齢人口のシェアがピークアウトする5-10年前には、実質成長率が高まる一方で、実質長期金利は上昇しない、この組み合わせは、資産価格バブルを生み出しやすい環境を整える役割を果たす』(pp.290-291)であろう。p.328の図7-4には中国の生産年齢人口の図が掲載されており、p.292に『世界経済を見回してみると生産年齢人口のシェアが先行きピークを迎えるのは中国である。(中略)経済史家のアンガス・マディソン教授の最新の予測では、2020年に中国の成長率は4.5%まで低下するという。あるセミナーでこの論文の紹介があったとき、参加していた中国のエコノミストは一斉に反対論を唱えた。私の予測は、この両者の中間を行くものである。』という興味深い指摘がある。

(補足6)時局論(conjuncture)としては、GDP gapはマイナスでありながら緩やかな景気回復局面の今においてはspeed limit論が大事。

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