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三國氏の米国不良債権推測

 日経ビジネス2008年10月6日号。

三國氏は、マクロデータを用いた分析で、最終的に100兆円近くに膨らんだ日本のバブル崩壊後の不良債権総額を早くから言い当てたことで知られる。当時は銀行や大蔵省などの金融関係者が10兆円前後と不良債権総額を見積もる中で、独自の分析で80兆円と予想していた。
 (中略)その手法は、米国の住宅ローン・消費者ローン残高の合計と米国の名目GDP(国内総生産)の関係に着目、実体経済の伸び以上に融資が膨らんだ部分が「不良化する」との前提に立っている。
 90年から2000年頃までは住宅・消費者ローン残高は名目GDP比60%前後とほぼ一定水準を保っていた。それが、2001年頃を境に、変化が表れ、住宅ローンの割合が急増するようになったという。「明らかに実際の経済活動に見合わない動き。それが名目GDPと比べて20%ほど多かった」と三國氏は言う。この20%に、米国の名目GDP約14兆ドルを掛けると、2兆8000億円となる。日本の不良債権総額が100兆円と名目GDPの2割程度だったのにも平仄が合う。

 数字は近いかもしれないが、誤った考え方。たぶん、三國氏の問題ではなく、聞き取りをした杉山・蛯谷・永井氏の問題であろう。乱暴さをメモしておく。不良債権総額とはストックの数字であり、フローの数字にある割合(20%)を掛けるとストックの数字が出てくるというのが乱暴。仮定されている推計式は、住宅ローン・消費者ローン残高と名目GDPとの関係は正の相関というだけでなく、1対1の関係にあるとの強い関係を想定している。これは、名目GDPが13.8兆ドル(2007年)であり、家計の住宅ローン・消費者ローン残高が12.5兆ドル(2007年第二四半期末)と近い数字であることで救われている。
 では、不良債権額と損失額はどのように推測したらよいのかと考えてみよう。家計がローン返済をしなくなる、もしくは、できなくなったローン総額を不良債権額とする。損失額は、このローン総額の担保となった不動産を売却したときに手に入る収入とローン総額の差額になる。では、家計はいつローン返済をしなくなるかというと、ローン総額を不動産の価値が下回るときだろう。不動産を売ってもローンを返せないとすると、ローンをデフォルトして、不動産を渡したほうが損失がでないからだ。次に、家計はいつローン返済ができなくなるかというと、より重要な支出に金が回せないときだろう。例えば、家計の支出の半分がローン返済ではなかなか首は回らない。
 一つの考え方は、家計でもいいし、いくつかのまとまった階層(サブ・プライムローンを借りた階層+α)を考えて、1)一年間のローンの返済額が収入の何%(例えば半分)を超えたらデフォルトすると仮定する。また、2)不動産価格がローン総額を下回ったらデフォルトすると仮定する。元利均等返済の期間を平均期間で仮定し、金利を入れてやれば、どの階層が1)の基準でデフォルトするかを判定できる。また、当初のhome equityの比率(つまりは、down paymentの比率)を仮定してやれば、2)の基準でも考えることができる。デフォルト対象のローン総額が不良債権額になる。デフォルトをした不動産について、ローン総額と不動産価格の差が金融機関の損失になる。もし、サブ・プライムローンについて、当初のhome equityがゼロであれば、不動産価格の低下が起きると雪崩のようにデフォルトが起きることになる。
 プライムローンについては、1)の基準がより大事であろう。ここで、収入との見合いであるから、失業率(というよりもunderemploymentのほうが大事か)と、物価・賃金率の動向が重要になる。直感的に言えば、実質利子率が重要になる。実質利子率が上がると、固定利率のプライム・ローンでさえ、デフォルト領域に入るものが出てくるだろう。あとは、不動産価格がどこまで調整されるかを人口動態などを使って想定すればよいということになる。これで、後はデータとパラメータをそろえるだけでシナリオが作れる。

 以上が、ある程度、道のりが正しいguesstimateのやり方だと思うが、三國氏の議論をちょっとだけ正しくして、wild guesstimateしてみよう。12.6兆ドルの住宅ローン・消費者ローンのうち、2割が不動産バブルがなかったら行なわれなかった債権だとしよう。つまり、今後の不動産の値上がりを期待して行なわれたローンだと仮定しよう。つまりは、当初のhome equityはゼロ。すると、不動産価格の低下により、この2割はデフォルトして不良債権になることになる。12.6兆ドルの2割は2.5兆ドル、これが不良債権額。では、損失額はというと、home equityをゼロと仮定したので、不動産価値の低下額ということになる。不動産は2割ぐらい低下したのではなかったっけ。すると、2.5兆ドルの2割は5000億ドル。これは、Bloombergの推計とほぼ一致している(Bloombergによれば、そのうち3700億ドルは新規資本でカバー済み)。これは円にすると、250兆円の不良債権に、50兆円の損失額ということになる。3割落ちると、7500億ドルになるので要注意。不動産価格のfundamentalsの動向は米国経済の今後にかかる。しかし、よほどのことがない限りは長期の歴史的傾向にもどっていくことになる。クルーグマンのprice/rent ratioを見る限り、トータルで3割の低下はありそうなところだ。すると、あと3800億ドルの新規資本が必要になる。道は険しい。

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