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Plan Gなど

 Brad de Longが論説で出したPlan GのようにPaul Krugmanも"Let's Get Fiscal"を出している。ある世代以上の人にはおなじみだが、おそらくオリビア・ニュートン・ジョンの"Physical"のサビである"Let's Get Physical"の駄洒落かもしれない(違うかもしれない)。要は財政均衡などと言わないで、政府がインフラ建設まで手がけるとよい、との提言。
 関連するのだが、Mark Thomaが失業はSectoral Reallocation (Phelps)によるnatural unemployment rateの上昇なのか、そうではないのかという重要点についてサンフランシスコ連銀の研究を使って考えている。どうもそうではないらしい(未だ始まっていない?)とのこと。さて、自然失業率の動向と、自然利子率の動向は逆相関するのか?今は、おそらく総需要不足の状況だろう。しかし、設備投資が市況環境への見通しにより、あまり伸びないであろうし、企業融資もあまり芳しくないだろうから(マイルドなfinancial accelerator)、供給側の供給ショックがじわりとにじみ出てくるだろう。同時に、雇用面での部門間再配分が起きるだろうから、自然失業率はじわじわと高まり、同時に自然利子率は下がってくるのかもしれない。そうすると、当初(つまり今)の需要ショックを抑えるために利下げした連邦準備(次回は注目)は、この低利子率を2年間は続けていくこととなろう。この米国のここ5年の設備投資の動向ってどんな感じだったのだろうか。
 もうwild imaginationの世界の話だが、1991年から2002年までの日本の12年を3~4倍の速さで駆け抜ける(私はDog Year Modeと勝手に読んでいる)とすると3~4年、2007年夏から始まったとすると、今は3合目あたり。ここから実体経済(non-financial economy)に問題が出てくる。コーン副総裁は、景気動向にかなり悲観的な見方をみせたらしいが、アジア経済危機は、ズドンと落ちた後に、かなりの回復を(輸出主導で?)見せた。メキシコも98年からの回復は輸出主導だった。米国は内需中心だし、住宅部門は大きいのでなかなかきついだろう。ここが先進国と中進国の違いだろう。
 クルーグマンで言うと、Dixitがノーベル賞受賞理由の解説を行なっている。来年の受賞予想までしている。ローマー、グロスマン、ヘルプマンで内生的成長とのこと。
 さて、米国経済に戻ると、住宅部門をどう立て直すかというのは非常に大事な課題だ。レヴィットがゲストとして、Price V. Fishback(凄い名前だ)を招いて、大恐慌時の住宅ローン機構Home Owners' Loan Corporation (HOLC)について触れている。これは読まないといけない。
 では、日本経済の司令塔はどう見ているのかというと、これは新装開店した経済財政諮問会議の初会合ということになろう。たぶん、岩田議員が「世界的金融危機への対処について」を出しており、吉川議員が「社会保障・税財政一体改革への道筋の明確化に向けて」を出している。後者は未見だが、7頁の文書で、これは読んでおいたほうがいいかも。
 前者の多少ユニークなところはCDSの清算機関の提唱である。

決済リスクを軽減するため、CDS(※)など金融派生商品に関する清算機関の設置(相対取引のリスクのネット・アウト化)
※CDS(Credit Default Swaps)とは、信用状態に関わる事由が生じた場合に金銭を支払うことを約束する取引。相対のCDS取引は世界全体58兆ドル(BIS、07年末)。

よく知りませんが、これがピムコやブラックロックのように実物の不良資産のように民間でやれるのか、それとも、公的機関がやらなければいけないのか興味深い。リスクが実現しているときに、ネット・アウトできるのだろうか?与謝野議員は正直である。

(問)民間議員ペーパーの「世界的金融危機への対処について」の2ページ目の上に書いてあります、デリバティブに関する「清算機関の設置」という項目に関してなんですけれども、ここに関しまして、今日、民間議員から何か意見があったかということについてお聞かせ下さい。
 あと、今後これを進めていくのかどうか、進めていくとしたらどういう段取りで進めていくのかというところをちょっとお聞きしたいんですけれども。

(答)これは、そのペーパーにも「58兆ドル」と多分書いてあったと思うんですが、6,000兆円になんなんとするCDSの証券化されたものの残高があります。
 このCDSのもともとの貸し借りは、多分それの10分の1ぐらいの規模でありますが、これを一つ一つほぐしていくということは、このCDSの取引が、市場取引というよりもオーバー・ザ・カウンターが非常に多いという特徴もあって、これをほぐしていくのは何らかの、やっぱり仕組み、工夫が必要だと、そういう意味で書かれている。
 また、具体的にどうすればいいかというのは、問題が非常に奥深いので、そう簡単に、こういうCDS解消の決済の仕組みというのは、考案するところまではいかないんですけれども、しかしながら、取引を一つずつ解消していくという意味では、何らかのそういう取引の場というものが必要だという認識を民間議員ペーパーは示されたと、私の理解度ではそこまでしかわからない。

 あと、政局やマクロ絡みでは、もう一点あって、これも与謝野議員の記者会見で明らかになる。

(問)今日、かなり長時間にわたって議論をしていたようなので、もう少しこの議論の中身を知りたいんですが、まず「金融危機への対処」のところで、民間議員のペーパーにも「単なる短期的な総需要対策ではなく」という部分が入っていて、これは麻生首相の方針でもあると思うんですけれども、一方で、与党では、短期的な総需要対策ともとれるようなものが、結構、案として出ているようなんですけれども、これについて民間議員なり出席者から何らかの意見の交換はありましたか。

(答)党側の意見というのは、正式なまとまった形では出てきておりません。しかし、概して、総需要対策というものには否定的な御意見が出てきましたし、私が伺っている限り、党のほうで考えておられる政策の中で、公共事業は当然ありますけれども、それは必要な政策を行うために必要な公共事業であって、いわゆる「総需要政策」としての公共事業というものは、一切含まれていないというふうに現段階では理解をしております。

(問)党側の話は理解しましたが、要するに、今日の会議の中で出席者からこの部分について、何らかの意見の交換はありましたか。

(答)この部分については、岩田議員の紙の段階で議論はとどまっております。

(問)それで、基本的に、このペーパー2枚とも、基本的にはこういった方針で政府としていきましょうということで、そのコンセンサスは得られたんでしょうか。

(答)得られました

 下線は私が引きました。この部分からも、岩田議員がこのペーパーを書いたことは証明できるのだが、こういう論点整理だということである。深読みすれば、景気対策(循環要因)は日銀やってね、ということであるが、これに備えた白川総裁の配布資料は非常にdefensiveで、今後の日銀の行動を示唆している。石油価格が落ちてきたので、いわゆるコアの消費者物価の動向が気になるところだ。総裁は、講演でリスクは上方にも下方にもと言ったらしい。連邦準備が金利を下げる可能性があるらしいだけに、通常の景気後退に際してフォーワード・ルッキングにどうするのだろう。今から金利を下げても、後追い感は強いのだが、、、。物凄く偏った政局読みをすると、衆議院選挙を控えて、金利引き上げを提唱する人々が多い民主党に配慮しており、とにかく選挙前に副総裁を手に入れるということがプライオリティなのかもしれない。そう読まれると心外だろうが、まぁ平仄は合っているような気がする。

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Comments

1.
オリヴィア・ニュートン=ジョンはありうるでしょう。クルーグマンは1950年代生まれ。20代はオリヴィア・ニュートン=ジョン最盛期です。ただ、もともとGet physicalというのは英語として定着しているとおもいます。

2.
景気対策は日銀でお願いね、というのは、ほぼ確実に与謝野、麻生のラインからはでてこないでしょう。ただ、日銀が防衛的なのはいつもどおり。

3.
今頃金利下げて間に合うかというのはありるとしても、現状で半年なり1年先でよくなる見通しもない。フォワード・ルッキングなら金利を下げるしか選択肢はー本来ならばーないでしょう。

Posted by: Fellow Traveler | 2008.10.18 at 08:55 PM

Fellow Travelerさん、コメントありがとうございます。
1.
get physical:手荒なまねをする、暴力をふるう、など、だったんですね。コメントどうもです。
2.
まぁ、記者会見を文字通り読めば、岩田議員執筆の「単なる短期的な総需要対策ではなく」という提案で合意が得られた、ということになるわけです。さて、私はよくは知らないのですが、より財政による短期的な総需要対策に熱心な麻生氏と、より財政再建に執心な与謝野氏という対比があるとすれば、与謝野氏は、景気対策は日銀でお願いねと言いそうな気はします。もちろん、まぁ、二人は五十歩百歩なのかもしれません。このあたりは選挙がらみもあるのでよくわかりません。
3.
仰るとおりだと思います。私は日銀内部は知りませんが、書いたような人事・政局絡みのことがあるとすれば、副総裁が決まってから、米国と合わせて金利下げになるような気がします。

Posted by: ひさまつ | 2008.10.18 at 10:28 PM

私がみるところ、与謝野という人は定見のない人です。定見があるかにみえるのは役所の意見の受け売りだからです。その観点からすると、日銀に景気対策を求めることは200%ないと思います。というよりもすでに実例があります。2006年3月に日銀が量的緩和を解除したときに、議決延期権を行使せずに政府は「歓迎」しました。そのときの経済財政担当大臣こそ、与謝野氏です。

その観点からすると「単なる短期的な総需要対策ではなく」というのは、与謝野流構造改革路線で、財政再建(財務省)、あるいは社会保障制度改革(消費税の福祉目的化=財務省)へのポインターでしょう。

Posted by: Fellow Traveler | 2008.10.19 at 12:35 AM

 重ねてコメントを有難うございます。そうですか、定見の無い人なんですか。それは残念ですね。政治家というのは、選挙前に景気対策のポーズをとるものだと思っていたので、たとえラグがあっても、財政がきついのなら、金融政策をやらせようと思うのが政治家心だとおもったのですが、違うようですね。たしかあまり選挙にも強くないと聞いたことがあったような気もするのですが、役所の意見の受け売りをしていて何が楽しいんでしょうね。

Posted by: ひさまつ | 2008.10.19 at 01:17 AM

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