斉藤修『江戸と大阪:近代日本の都市起源』
斎藤修『江戸と大阪:近代日本の都市起源』(NTT出版:2002年)。中心仮説は、江戸時代に農村の生産性が上昇し(農村の実質賃金が上昇し)、地方(小都市)が興隆した。その結果、大都市はインパクトを受けることになった。その方向は江戸と大阪では全く異なった。江戸では、賃金が上昇し、年季制が後退し、外部労働市場化(口入屋の隆盛)が進行した。大阪では、大店の内部労働市場化が進行し、熟練が形成された。
この効果は、明治になると、大阪の内部労働市場による熟練形成が、大企業でのホワイト・カラーからブルー・カラーに広がっていくことになる。明治の職人は、農家での熟練と規律が基礎となって新しい職人層をつくっていくことになるという。
江戸と大阪のこの対照性は、いわゆる黒死病後の西欧と東欧の異なる方向とパラレルなところもあり、興味深い。また、四世鶴屋南北の殺伐さと近松門左衛門のねっとりはんなりした緊密さとも対応している。明治以降、近松が再評価されていくのも大企業インテリの内部労働市場化と呼応しているのかもしれない。
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