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その数学が戦略を決める

41soaw7rf5l_aa240_ イアン・エアーズ『その数学が戦略を決める』文藝春秋。題は、多くの世の中の数学嫌いを遠ざけるという意味で良くない題だが、その理由も本の中で明らかにされているという良い本。英語の副題を翻訳してみると、『数字で考えることがなんで利口になる新しい方法かということ』ということになり、数学ではなく数字なんです。この題で売り上げが落ちたら、それはたぶんデータがあればできると思うけど、編集者はボーナスを自主返上すべきかもね(ハハハ、日本的)。とにかく『数字でできたデータと正規分布で考える』ということ。The Black SwanのTalebさんはひきつけをおこすか、こういう事例だけが正規分布で考えられるんだと力説しそうだが、とにかく面白い本。
 貧困削減に関心のある人は、大流行りのrandomized experimentという言葉を耳にしたことがあるだろう。たしか、西条 辰義編『実験経済学への招待』に収められた高野久紀「フィールド実験の歩き方」がイントロとして良いと思うけど、この本の第3章3.4(p.103-)も悪くない。ここで紹介されているメキシコのプログレッサ計画については、エアーズ氏はガートラーの意見に頼り切っていてやや単純化しているけど、より正しくはSantiago LevyのProgress against Povertyをまず読んだほうがいいでしょう。たしかにZedillo大統領は重要だけど、一億人の国において一人の大統領だけじゃ何もできないってことは当たり前だよね。私が功労者を一人上げるならSantiago Levyかな。こういう本を出すらしい。
 randomized experimentに戻ると、先日、Dani Rodrikがこのポストで蚊帳を無料で配る(サックス案)か、いくらかでも有料にしたほうがいいかという話をしていた。こういうのって、いわゆるグラント vs. ツーステップローンにも応用できるんじゃないかしらね。ただし、randomized experimentの限界についても、Rodrikのguest postが言及していたような気がする。もちろん、学界というのはsocial clubだから流行はフォローする責務がある。

 【後記】Super Crunchingに対して訳者は「絶対計算」という言葉を当てている。data miningに対して「データマイニング」、number crunchingに対して「数値計算」という言葉を当てている。翻訳80ページ、原書56ページ。

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