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新潟県金融経済懇談会における岩田副総裁挨拶要旨

新潟県金融経済懇談会における岩田副総裁挨拶要旨(3月7日)と記者会見要旨が発表されている。2月の金融政策決定会合の利上げに際して、唯一の利上げ反対者であり、その講演が注目されていたと思う。まず、添付された図表集の図表11に需給ギャップとユニット・レーバー・コストが掲載されている。講演で注目したのは以下の表現。

 最後に、日本銀行と市場との対話について、必ずしも円滑に行われていないのではないかとの批判があります。中央銀行は、「金融政策運営に関する基本的な考え方」と「金融経済情勢に関する判断」を市場や国民に対して丁寧に説明する必要があります。この2つの点について丁寧に説明することによって、金融政策運営の透明性が確保されるばかりでなく、政策の有効性も高まることになります4。

 
市場参加者は、中央銀行が提供する情報をもとに自らの経済物価観をすりあわせながら金利形成を行っています。中央銀行は、市場金利やイールドカーブの動きから市場参加者の経済物価観を読み取ることが出来ます。市場との対話とは、このように双方向のものです。ここで重要なポイントは、中央銀行は、政策運営についての大きな流れを示すけれども実際の政策のタイミングまでは特定しないということです。

 金融政策決定会合においては、各委員はそれまでに入手可能な最新のデータや情報をもとにして、経済・物価の現状と先行きを討議します。従って、あらかじめ政策のタイミングを市場に知らせることはありえないし、仮にそうした場合には、市場から情報を読み取ることが出来なくなってしまいます。市場と中央銀行との対話は、可能な限り雑音や歪みのない形で行うことが望ましいといえます。(太赤字は引用者の私)

そして、4の注には以下のような文章が付されている。

4イングランド銀行の市場とのコミュニケーション・ポリシーについて、キング総裁は、中央銀行は、「金融政策の目標」と「経済の現状と先行きについての分析」という2つの鍵となる情報を市場に提供することによって、市場の政策金利に関する期待形成に資するようすべきであるが、誰一人事前に結論を知ることが出来ない、利上げするかどうかといった金融政策の決定についての情報は、市場に提供すべきでないと論じています。詳しくは次のスピーチを参照して下さい。 “Speech by Mervyn King Governor of the Bank of England at the Lord Mayor's Banquet for Bankers and Merchants of the City of London at the Mansion House”, 21 June 2006

 市場との対話は、双方向のもので、市場は中央銀行が出す情報(これは、統計情報だけでなく、講演などの政策や分析に関する情報も含まれると考えられる)を読んで、自らの経済物価観とすり合わせて金利形成を行う。中銀は、その金利をまた読んで政策判断をしている。この双方向性が重要であり、政策のタイミングを仮に中央銀行が事前に知らせてしまった場合には、中央銀行は市場から情報を読み取ることができなくなる。箴言である。

 次に、記者会見ですが、以下の発言が重要だと思う。

 私の異論は、簡単に言えば、消費者物価指数(除く生鮮食品)の先行きについての不確実性が高い、あるいは不透明性が高いという点が、重要なポイントです。従いまして、長い目で見て、日本経済の拡大のメカニズムがしっかりしており、しかも、世界経済の拡大メカニズムもしっかりしていれば、いずれ消費者物価も安定的にプラスの方向に動いていきます。目先は確かに下振れと言いますか、ゼロないしはマイナスということもあるでしょう。しかし、そうした長い目で見た場合のメカニズムについて、私に異論があるわけではありません。但し、不確実性ということをもう少し敷衍しますと、物価の上昇を押し上げていく力、一つは経済全体の需要と供給のギャップ――GDPギャップと言って良いと思いますが――をみますと、今回の景気回復あるいは拡大局面は、私どもの計測ではマイナス2~3%のところからプラス1~2%のところまで次第に上昇してきており、これが物価を押し上げる力として作用することは間違いありません。しかし、それを少し仔細にみますと、実はいくつか不確実性があるわけです。もちろん、皆さんもご承知のように潜在成長率は、私どもは1.5%~2%と述べていますが、それが1.5%に近いのか、2%に近いのか。あるいは、需給ギャップの計測の仕方でも、稼働率といっても、資本の稼働率については、製造業には非常に明瞭なものがありますが、労働の稼働率については労働の参加率やパート比率等、色々と構造的要因と景気循環的要因をどのように上手く仕分けるかといった技術的な問題があります。そういうこともあって、ある程度幅を持って需給ギャップの大きさをみていく必要があると思います。内閣府でも、最近の需給ギャップの数値はプラスとなっていますが、計測には常に誤差が伴うということも考慮する必要があります。そして、仮に正しく計測された需給ギャップというのを私どもが見ているとしても、物価がそれに対して十分に感応的に反応するかどうかは、構造的な変化があるかもしれません。例えば、グローバル化の進展とか、消費者物価指数が仮に一番川下に位置するとしますと企業物価指数は少し川上になりますが、川上の上昇圧力が、どのくらい川下の押上げ圧力に上手く働いていくのかどうか。あるいは、最近の統計をみますと、賃金がやはり伸び悩んでいますので、単位当たり労働費用が順調に物価を押し上げるような力になっていくのかどうか。さらに付け加えれば、指数の改定があって、過去使っていた物価指数と新しく改定されたもので、例えば需給ギャップに対する感応度が何か変化していないか。少し中身をみますと、新型の薄型テレビなどの耐久消費財の価格が大幅に下がってますが、そういう品目の入れ替え等による効果とか、そういったいくつか不確実性がありますので、これらを丹念に分析する必要があると思っています。そういう点の不確実性を、おそらく他の政策委員と比較しますと私の方がより高いと考えたところが、主な違いだったのではないかと思っています。

 物価に関する注目点の骨子を言い表したまとめである。

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