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手の内見せる欧州の中銀

手の内見せる欧州の中銀(けいざい解読)2007/03/18, 日本経済新聞 朝刊, 3ページ

欧州総局 吉田ありさ
 政策金利はこの先どう動くのか。中央銀行がそんな自らの金利見通しを示すのは、手の内を明かすのに等しい。長くタブーに近かったが、最近はスウェーデンなど欧州で開示に踏み出す中銀が相次いでいる。金融政策の透明性を高め、様々な憶測で市場が混乱するのを防ぐのが狙いだ。
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 「金融政策をできる限りオープンにしたい」。十四日、スウェーデン中部の町ショピング。ステファン・イングベス中銀総裁は地元企業の代表らを前に、今年から金利見通しを公表し始めた理由を説明した。二月にまとめた経済見通しの主シナリオでは政策金利は今の三・二五%から約三年かけて三・七五%に上がる。あくまで現時点の予測だが、見通しを伝えた方が国民は計画を立てやすい、と開示に踏み切った。「外れるかもしれないといって気象庁が来週の天気予報を出さないのは変でしょう」
 お手本は隣のノルウェーだ。中銀が年三回、金利予測を公表し始めた二〇〇五年以降、市場の安定度が高まった。「状況が変わったから」と、見通しと逆の金利変更をした時も混乱はなし。エコノミストも「考えを常に明示する中銀に市場の信認が高まった」(モルガン・スタンレーのトマス・ゲイド氏)と評価する。
 チェコ中銀も三月初め、金利予測を来年から公表すると発表。一九九八年から公表しているニュージーランドも含めると四カ国になった。すべて中期的に望ましい物価水準の目標を明示して金融政策を運営する「インフレ目標政策」を採用している中銀だ。
 「彼らの経験に学びたい」。主要国で唯一インフレ目標を導入している英中銀イングランド銀行。レイチェル・ロマックス副総裁は最近の講演で北欧の試みを紹介し、「予測」が「約束」と誤解されるリスクを懸念しながらも導入に意欲を示した。英中銀は一月の利上げが市場の意表を突く形になって、英ポンドや市場金利が乱高下する騒動を招いたばかり。想定する金利の道筋を示せれば市場との対話が円滑になり、政策効果も素早く浸透する。インフレ目標の次の一歩だ。
 欧州中央銀行(ECB)でも、トリシェ総裁が記者会見で「物価安定への監視」「警戒」といった独特の言い回しを使い、二カ月くらい前から市場が次の利上げを予想できるような誘導を始めている。日銀の利上げをめぐる憶測や与党幹部、閣僚の発言で市場が揺れた一月の日本のような混乱は起こっていない。
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 米国ではバーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長がインフレ目標の採用に前向きだが、反対論も強く、物価や経済成長率見通しの公表回数を増やして中身を拡充するといった代替案を検討中。就任間もない昨春に発言のたびに市場が乱高下した経験があるだけに、同議長は「市場と対話する道具」を探している。
 憶測で生じた動揺も瞬時に広がりかねないほどグローバル化した金融市場で、中銀がどう説明責任を果たせば信頼を得られるかは、どの国でも重い課題だ。政策の決定後だけでなく、途中段階でも考え方を発信し、立ち位置を明確にする――。こんな欧州の取り組みが、世界の中銀の新潮流になる可能性もある。
【図・写真】グローバル化した市場で、中銀の説明責任はどの国・地域でも重い課題だ

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