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日銀1月政策決定会合議事要旨

 日銀の1月の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。2月に利上げされた後の発表なのでニュアンスに多少の配慮があるかもしれない。興味深い点は、3委員の金利据え置きへの反対意見である。

―― 須田委員は、①経済・物価の先行きシナリオにより確信
が得られたこと、②低金利が経済・物価情勢と離れて長く
継続するという期待が定着するような場合には、金融行
動・投資行動などを通じて、中長期的にみて、経済・物価
が大きく変動する可能性があること、③安定的な成長を持
続させるためには、金融政策の効果が現れてくるまでのタ
イムラグを踏まえると、問題が目にみえるようになる前に
対応する必要があること、から、反対した。
―― 水野委員は、①先行きの景気は緩やかな拡大を続ける可
能性が高く、長い目でみれば、物価も徐々に上昇していく
ことが見込まれること、②こうした展望が確認できた以上、
金融政策の正常化を進めることが自然であり、正常化を進
めないと、金融政策予想の不確実性を高めてしまうこと、
③そうした状況が金融市場に定着することによって、市場
との対話が困難になること、④また今回利上げを見送った
場合、為替円安の進行を容認したと誤解される惧れがある
こと、から、反対した。
―― 野田委員は、①生産・所得・支出の好循環というメカニ
ズムが維持されるもとで、展望レポートのシナリオに大筋
沿って、経済の緩やかな拡大が続くと改めて判断されたこ
と、②現行の政策金利水準を維持すれば、金融政策面から
の刺激効果が一段と強まり、将来、経済・物価の振幅が大
きくなるリスクが高まってしまうこと、③このタイミング
で政策金利水準を引き上げておくことが、フォワード・
ルッキングな金融政策運営の考え方に適っていること、か
ら、反対した。

 興味深い点は3点。第一に、須田委員は本文p.8の以下の表現の主語である可能性が高い。

3.中間評価
以上のような経済・物価・金融面の情勢認識を踏まえ、一人の委
員は、わが国の景気は、昨年10月の展望レポートで示した「見通
し」に概ね沿って推移していると考えられると述べた。この委員は、
成長率の水準は「2006年度2 % 台半ば、2007年度2 % 程度」から
「2006年度、2007年度とも2%程度」に下振れると予想されるが、
2006年度の成長率下振れは、2005年度計数が確報化により下方修正
されたことに伴い、2006年度への発射台(年度中の各期の前期比伸
び率がゼロであった場合の年度平均の前年比) が0.3% ポイント縮
小したことの影響が大きいと述べた。

同定した理由は、次の引用と表現がほぼ同じであるからである(「発射台」など)。 つまり、景気は良いという判断を示している。この点から、須田委員は金融月報についても反対をしている。

―― 須田委員は、① 2006 年度の成長率下振れは、2005 年度
計数が確報化されたことにより、2006 年度への発射台が
縮小したことの影響が大きく、経済の実勢としては展望レ
ポートに示したシナリオに概ね沿った動きを示していると
考えられること、②7~9月における個人消費の落ち込み
には、天候不順や新製品投入前の買い控えといった一時的
要因が大きく影響しており、10 月以降の関連指標は総じ
て持ち直していることから、個人消費の現状判断における
「やや伸び悩みつつも」という表現は不要であること、か
ら、反対した。

 一時的要因では、個人消費が「やや伸び悩みつつも」と言う必要はないという意見である。私は叙述的分析としては、伸び悩んでいれば理由がなんであれ伸び悩んでいると書くべきだと思うのでこの意見には反対。

 第二に、水野委員は、「金融政策の正常化」という言葉を使っている。利上げ=「金融政策の正常化」であろう。水野委員には、今後、金融政策の非正常とはなにか?正常化とは何か?という質問が繰り出されるであろう。

 第三に、水野委員の反対理由には為替レートが入っている。当然、為替レートは金利裁定等で金融政策と大きな関係をもっているが、日本政府の仕事分担では為替レートは財務省の主管である。ということで、日銀としては意見を控える傾向があったと思う。これは今後に注目。

 第四に、野田委員の意見は①が第一の柱、②が第二の柱、③はフォーワード・ルッキングの説明になっており、2月利上げ時の福井総裁の記者会見と同じだと思う。このことは極めて興味深い。
 次に、本文p.9の以下のような表現は2月利上げとの関係で興味深い。

これに対し、多くの委員は、「無担保コールレート(オーバーナ
イト物)を、0.25%前後で推移するよう促す」という現在の金
融市場調節方針を維持することが適当であるとの見解を示した。こ
れらの委員は、海外経済の拡大を背景とした輸出の増加を起点とす
る生産・所得・支出の好循環のメカニズムに変化はないと判断され
るものの、このところ強弱様々な指標が出ていることから、今後公
表される指標や様々な情報を引き続き丹念に点検し、経済・物価情
勢をさらに見極めることが適当であるという考え方を示した。これ
ら委員は、フォワード・ルッキングな金融政策運営を行っていく上
では、先行きの見通しに十分な確信を得ることが重要であり、現時
点においては、そうした確認作業を行う時間的な余裕があるとの考
え方を示した。このうち複数の委員は、こうした確認作業を経て、
経済・物価の先行きが見通しに沿って展開していくことについて十
分な確信が得られた段階では、遅滞なく政策金利の調整を行い、低
金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着しな
いようにする必要があると付け加えた。何人かの委員は、今後の
チェックポイントとして、米国をはじめとする海外経済の状況、家
計部門の動向、物価を巡る環境などを挙げ、これらの分析を通じて、
将来の経済のトレンドを的確に判断していくことが重要であるとの
考え方を示した。

 おそらく、この後段の部分が2月への継続性となり、2月には「遅滞なく政策金利の調整を行った」ということになるのだろう。チェックポイントは三点、①海外経済、②家計部門の動向、③物価環境、である。2月の月報には、家計調査を議論しながら②について書いていたように思う。③はどうだったか(宿題)。
 さて、memo to selfだが、90年代の評価が今更ながら重要になる。90年代に労働市場に構造変化が起こり、それが現在まで継続しているとの見方をとれば、需給ギャップは正をとり、第一の柱により利上げという「公式見解」になろう(もしくは、90年代のトレンドをとって潜在成長率を推計するとだいたい同じことになるだろう)。しかし、90年代は、(政策の失敗による)需要不足であり、特に構造変化はおきなかったという見方に立てば、現在もなお需要不足はやや続いており、労働市場まだタイトになっておらず、賃金も上がらないという見方になろう。この見方からすれば、利上げは尚早であるということになろう。90年代の評価については、学界の貢献、例えば林文夫編集の三冊本が役に立つはずである。なお、金利引き上げの経路とその期待が問題になっていることを再度確認。

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