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須田美矢子審議委員2007年1月25日

日本経済の現状・先行きと金融政策
 ― 佐賀市における金融経済懇談会での須田美矢子審議委員挨拶要旨(2007年1月25日) 興味深い点はニ点。第一に、

 現在の標準シナリオは、政策金利について市場に織り込まれたと見られる市場参加者の予想を参考にしつつ作成されています。現在は利上げが織り込まれていますので、それを前提に標準シナリオはつくられています。したがって、現実の経済物価情勢が標準シナリオに沿ったものであれば、おのずと市場の平均的な見方と大きく乖離することなく利上げに行き着くことになります。決定会合で政策の変更を検討する際には、その時点での経済物価情勢が標準シナリオに沿った動きであると判断されるかどうかという観点も大事ですが、それだけでなく、上振れ・下振れリスクとの関係で、その標準シナリオの実現性に対する確信度合いも重要になります。

 新たな金融政策運営の枠組みにおける「標準シナリオ」と「市場の予想」との関係についての表現は、最初は『参考』、次に『前提』、そして『沿った』、さらには『おのずと』と変遷していく。
 標準シナリオにおいて市場の予想金利パスに対置されるのは、標準シナリオにおいてimplicitに設定されている「望ましいと決定会合が考える金利パス」である。また、「望ましい金利パス」を審議委員それぞれはimplicitもしくはexplicitにもっていて、それを勘案しながら市場は予想金利を形成していると考えたほうがよい。つまり、審議委員は、市場での予想金利パスにおいて、全ての審議委員の「望ましい金利パス」+「その結果としての政策決定会合によって決定される金利パスの予想」の反映を見ているのである。
 市場の予想金利をただ「参考」にしただけの標準シナリオに審議委員が賛成している場合には、その標準シナリオが想定している「望ましい金利パス」を十分に議論したり、明示してもらいたいものだ。それを市場の予想金利を「前提」になど格上げしてはいけない。そういう無責任な判断を市場は最終的に嫌う。「当局が考える望ましい金利パス」をFedのmeasured paceなどの語句は示唆していたはずである。BoJにとってはgradualにあげていくと言っていたはずだから、その説明を十分にしていけばよいはずである。もちろん、gradualとは半年に1回である必要はない。それに対して、『市場との対話によって政策金利の利上げを市場に織り込ませ、これを「参考」にするのだから、「前提」であり、「おのずと」金利を上げたらよい』と議論したら危ういはずである。重要なのは、標準シナリオにimplicitに設定された「望ましい金利パス」及び、各政策決定会合メンバーそれぞれの「望ましい金利パス」が十分に議論され推論され、かつ十分に明らかにされているかである。ここには、執行部三人が共同歩調をとるべきだと信じられていることから起こる非対称性があろう。つまり、それぞれが「望ましい金利パス」が共同歩調によって明らかにされないリスク。
 第二に、須田審議委員は頻繁に福井総裁の講演を引用しており、ご自分の意見に対しての福井総裁の反応を期待しているようである。福井総裁が執行部三票をまとめることができれば、次回には3対6で利上げになり、そのことを事前に予想した利上げ反対派のうち総裁協調派は利上げに転換するだろう。

 私からすると、「新しい金融政策運営の枠組み」+「標準シナリオ」がもたらす「望ましい金利パス」は「gradual」なものであり(そして、そう表明されおり、市場もそう消化しており)、経済アクターへの将来への期待形成を壊さぬよう、そして需要不足がどの程度なのかを考えながらやればよいと思う。家計データに不安があり、景気予測も落ち込み、それが利上げとあいまって期待形成に悪影響を与える可能性があった1月には利上げをしないのが当然でった。2月がどうかは、データによる。

 ちなみに、ここでRobet Alan Feldmanはとことん正しい。

If a person is about to jump off a bridge and a police officer stops him, one should not criticize the jumper for a lack of independence because he was dissuaded. Nor should one criticize the police officer for compromising the independence of the jumper. The real problem is why the jumper wanted to jump.

 すでに市場は、総裁の「望ましい予想金利パス」が「正常化(normalization)」だと十分に判断していると想像する。そして、それを執行部に浸透できると判断したときには、「標準シナリオ」の書き換えも要求される事態も起こりうるだろう。財務省OBの副総裁は金利上昇に敏感なはずであり、経済学からしても執行部が「正常化根拠」(もしくは、円安根拠、もしくはキャリートレード根拠)の利上げで一致するとは思えない。円安には、財務省の非不胎化円買い介入で対応しますか?とはいえ、2月は、データにより、利上げもあるかもしれない。現状はある種の景気の踊り場にあって、期待形成自体が非常に重要な状況なのだと私は感じている。

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