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須田審議委員講演への疑問

 須田美矢子審議委員が7月26日に神戸で講演をした。ゼロ金利解除後の審議委員の講演として重要になる。しかし、いささかわからないところがある。

 マクロ経済学の基本は、完全雇用の状態では、総需要への刺激は物価上昇にしかならない、というものだ。失業(非自発的失業)がある非完全雇用の状態では、総需要への刺激は物価に対してはやや上がり目、雇用が増え、経済活動も潜在的な最大能力に近くなる、というのがオーソドックスな総需要総供給分析になる。とすると、完全雇用においては、「物価」への注意と「需給ギャップ」への注意は太宗として同じことを考えていることになり、非完全雇用において「物価」への注意と「需給ギャップ」への注意という二本の棒が立つが、このときの「需給ギャップ」への注意の根本は「総需要の不足」、すなわち「失業」にあることになる(理論的に「過剰総供給」というものはマクロにおいては存在し得ないので論外)。

 とすると、須田委員が、現状の議論が「物価」に当たり過ぎているとして、「物価」と「需給ギャップ」という二本の棒への注意の喚起を呼びかけているのは、現状が「非完全雇用」にあることを前提とし、そして、「総需要不足」を問題にしている他はなくなる。しかし、須田委員が「需給ギャップ」を問題にしているのは、景気過熱を心配してのことのようだ。それなら、現状の議論のように物価をより心配すればいいのだから、論理的に矛盾する。

さらに第2の「柱」である金融政策運営という観点から重視すべきリスクについては、企業の収益率が改善し、物価情勢も一頃に比べ好転している状況下、金融政策面からの刺激効果は次第に強まってきています(図表18)。このような状況のもとで、これまでの政策金利水準を維持し続けると、需給ギャップの水準がプラスの方向に向いていることから、中長期的にみると、経済活動の振幅が大きくなり、ひいては物価上昇率も大きく変動するリスクがあります。一方、経済活動や物価上昇率が下振れした場合でも、経済・物価情勢を見極めながらゆっくりとした金利調整を行うであれば、金融システムの安定が回復し、設備、雇用、債務の過剰が解消されてきていることなどから、物価下落と景気悪化の悪循環が発生するリスクは小さいと考えています。 

 ただし、ウォッチャーからはタカ派須田委員がややプラスのインフレ率を提示したというのは新情報だろう。

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