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日銀金融政策への自分の整理

重要な情報は次の事項でしょう。(3月9日~3月10日)

  1. 金融政策決定会合の決定内容 (金融市場調節方針の変更について)
  2. 新たな金融政策運営の枠組みの導入について
  3. 金融経済月報(全文、3月)
  4. 総裁定例記者会見 ( 3月 9日) 要旨
  5. 「物価の安定」についての考え方
  6. 衆議院における「通貨及び金融の調節に関する報告書」総裁概要説明
  7. 衆議院国会中継における3月10日の財政金融委員会の模様(福井総裁、岩田副総裁、白川理事他出席)

このほかに10日には福井総裁は参議院の予算委員会にも参考人として出席しているが、これは未見です。以下、No.1とかNo.2という風に表すことにします。

まだ、整理だててまとめきっていないので、ややアト・ランダムに行きます。

 第一に、リスク・マネージメント・アプローチの採用。これはNo.2の1(2)に表れています。

 第二に、その際に鍵となる「物価の安定」について詳しい考え方の公表。これはNo.2で書いたあと、さらにNo.5で詳しく説明しています。

 第三に、「物価の安定」において『アンカー(錨)』となる審議委員の「物価の安定」の目安の集約の公表。No.2で書いたあと、No.5でさらに説明している。

『消費者物価指数の前年比で表現すると、0~2%程度であれば、各委員の「中長期的な物価安定の理解」の範囲と大きくは異ならないとの見方で一致した。』

 第四に、岩田副総裁は、「中長期」として経済へのショックから回復する期間と定義し、具体的には3年から5年というアイデアを示した。これは、No.7での小沢氏への答弁であった。

 第五に、今後の物価へのユニット・レーバー・コストの役割への指摘。これは、No.1で表現されている。

『物価面では、消費者物価指数の前年比はプラスに転じている。この間、経済全体の需給ギャップは緩やかな改善が続いている。ユニット・レーバー・コストの動きをみても、生産性の上昇は続いているが、賃金は増加に転じており、下押し圧力は基調として減少している。さらに、企業や家計の物価見通しも上振れてきている。こうしたもとで、消費者物価指数の前年比は、先行きプラス基調が定着していくとみられる。この結果、「約束」の条件は満たされたと判断した。』

ちなみに、2005年12月15,16日の金融政策決定会合の議事要旨には以下のような記述がある。

『雇用・所得面について、委員は、雇用者数、賃金がともに増加し、雇用者所得も緩やかに増加を続けているとの見解で一致した。何人かの委員は、所定内給与が前年を上回って増加していることに加え、アンケート調査等によれば、冬季賞与も夏季賞与以上の伸びになったとみられると指摘した。また、複数の委員は、来春の労使交渉で好業績企業を中心に賃上げが合意される可能性があるが、これが実現すれば、ユニット・レーバー・コストの低下圧力が一段と和らぐことを通じて、物価にも影響が及ぶ可能性があると述べた。一人の委員は、短観の雇用人員判断や新卒採用計画にもみられるように、企業は人手不足感を強めており、これまでの「人減らし」から「人への投資」という新たなモメンタムが鮮明化してきていると述べた。 』(下線部筆者)

 以上の五点が当面の私の注目点。これを以下のように仮に整理してみよう。

  1. 金融政策決定会合に参加する審議委員は、リスク・マネージメント・アプローチの中で、「中長期の「物価の安定」」に注意することに同意している。これがフォーワード・ルッキングであることに注意。
  2. 金融政策決定会合の決定方法は、審議委員のみの多数決制であり、審議委員の「中長期の「物価の安定」」への考え(A)がわかり、その一方で4月と10月に発表される『経済・物価情勢の展望』において審議委員の物価への予想値(B)がわかるのであるから、その二つの比較から今後の金融政策への展望が期待できる。A>Bなら緩和方向、A<Bなら引き締め方向。
  3. この日本のやり方は、欧州のやり方と並ぶ程度の透明性を保持したという風に理解できるだろう。ここは財政当局と金融当局の協力のあり方とも関わり、3月10日委員会の岩田副総裁の答弁(英国、欧州、米国の事例を紹介)に如実に現れている。
  4. とくに、今後の物価情勢について、ユニット・レーバー・コストが指摘されていることに注目。wL/Y = w/(Y/L)と表されることから、賃金(分子)の動向と、労働生産性(分母)を比べればよいことになる。労働市場を見るときには、しばしば自然失業率の概念が使われるが、おそらく経済の構造変化により現況の日本経済の自然失業率を目安としても確定することは難しいだろう。構造変化により労働市場のミスマッチが起きていることは承知の通り。このため労働市場の量的側面(自然失業率)への注意を喚起するのではなく、価格的側面(賃金)への注意を喚起しているものと思われる。ただし、ゼロ金利の解除とユニット・レーバー・コストの動向が関係しているかは必ずしも不明。ユニット・レーバー・コストの図表が金融経済月報には無いが、決定会合では議論が行われていることも興味深い。また、ユニット・レーバー・コストが増加したとして、それがどのような大きさのインパクトをどのようなラグで物価に与えるかは私にはよくわからない。参考として、pY = wL+rKより、p = wL/Y + rK/Yになる。(ケインズの貨幣論を再び見てみよう。)
  5. 労働市場に注目するのではなく、自然利子率と市場利子率との比較を行なうヴィクセル的アプローチもある。短期で考えて、実質市場利子率が若干のインフレによりマイナスになり、実質自然利子率がプラスであるとすると、インフレ的な金融政策の態度になっていることになる。
  6. もう一つ、注目しなければいけないのは今後のイールド・カーブの動向。これは期待と大きく関わる。これは金融経済月報に掲載されている。短期は上がり、長期はフラットになっている。
  7. 最後に、日銀としての国会への説明分担は4月10日の委員会を見る限り、一般的な部分は福井総裁、理論的な部分は岩田副総裁、技術的な部分は白川理事、という風になっているように思われる。これが定着するかどうか。

 当面の私の頭の整理はこんなところ。また、改めて考えよう。

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