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桜井英治『室町人の精神』

桜井英治『室町人の精神』(講談社、2001年)。こういう通史物は面白いが、わからないように通説への批判がなされているようでつかめないところがある。興味深い点を抜書き。

「荘園の代官職もなかば商品化し、一種の代官職相場が立つようになる。厳密にいうと、代官請負には、毎年の豊凶によって年貢額が変動する「所在所務」と、毎年の豊凶にかわりなく一定の年貢額を納めつづける「請切」という二つの契約方法があったが、より投機性の高い後者の「請切」額があたかも為替相場や商品相場のように政治情勢や気象、その他風説のたぐいによっても激しく変動したのである。」(p.200)

さて、「所在所務」のほうは株式の資産価値の測定、「請切」はfixed income instrumentの資産価値の測定になる。当然、BS式などを使って、いろんなパラメーターを推計することができるだろう。これも新見荘の資料を使っている。

p.202では徳政令への領主の喜びを書いているが、当然、金利は上がることになり、結果として「貸し渋り」が起こるであろう。p.209では、実際にそれが起こったことが書かれている。p.210には室町幕府の財源について説明がなされており、興味深い。

「尊氏が京都を本拠地に定めて以来、幕府は長く土倉・酒屋の財力を間近にみせつけられてきたが、京都市政権は商業税の徴収件を含めいまだ朝廷側にあり、しかも当時の土倉・酒屋の多くは山徒として山門の人格的な支配下に置かれていた。こうした状況に変化があらわれるのが三代将軍義満の時代である。(中略)このような商業・流通活動への財政的依存の大きさは前代の鎌倉幕府などにはみられない、まさに京都という経済先進地に居を占めたことにより室町幕府が獲得した新たな特徴であった。」(p.219)

p.220-221には土倉への税金の話が出ているが、tax incidenceを考える一つの材料になるかもしれない。本当に<富める者が支払うべし>という有徳思想を実現するものであったのか。fundの需要関数の利子率弾力性が小さければ、需要側(借り手)がより税を負担することになり、土倉は必ずしも税をたくさん負担するわけではない。

「贈与の特性であるこの計算可能性・予測可能性に着目した幕府は、この献物を諸寺社の造営・修理費に流用することを思いついた。具体的には寺院Aが将軍に献上した献物を造営・修理を必要とする寺院Bにそのまま寄付するというかたちをとったのである。寄付をうけた寺社は現物での寄付であるにもかかわらず、それらの銭建て評価額を記入した請取状を将軍に提出した。」(p.243)

p.245の「徳政分一銭の創出」は面白い。

p.249からの「中世の日本が銅銭の自鋳をおこなわなかったのかという問題」についての筆者の解答は、自鋳はセニョラージが目的であり、大規模な財政支出を必要としなかった中世日本の政府にとってはセニョラージが不要であり、そのため自鋳を行わなかったという説明をしている。ありうる仮説であるが、日明貿易により銅銭が贈り物として明政府から与えられていること(p.247-248)を考えると、日明貿易と自鋳のcost benefitの比較により、日明貿易のほうが望ましいという結果を得ることも可能であるように思われる。国家貿易により政府が銅銭を安価で仕入れることができれば、それがセニョラージであるとも言える。すなわち、貿易を閉じれば、自国で通貨を自鋳する必要も出てくるし、大まかに言って、それが江戸時代の貨幣発行について説明する仮説であるようにも思われる。

「守護被官の一揆が守護家のヘゲモニーを掌握したときこそ、まさに戦国大名出現の第一歩であった。」(p.209)

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