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日本の金融政策をちょっとウォッチ

今日のニュースで言うと最高裁判決は画期的だが、日本の金融政策をちょっとウォッチしておくことにする。

日経9月15日5面、18面において、福間委員の記者会見、岩田副総裁の発言が特筆されている。8月8・9日の日銀・金融政策決定会合の要旨にもあるように福間委員は量的緩和の削減に賛成派であることは周知の事実である。その点では、福間委員の意見はニュースではない。そこで、福間委員が削減に賛成する理由だけ抜書きしておこう。

「一挙にストンと落とすと市場にショックを与える。市場に痛みを与えずに金利政策へ移行していきたい」

つまり金融市場へのインパクトを考えているわけである。これに対して岩田副総裁の発言はニュースである。というのは、政策委員会の中で、水野・福間がタカ派(日銀当座預金残高の目標削減に賛成)だとすれば、岩田はハト派(目標削減に反対)と目されているからだ。その他の委員の色分けとしては、一般には福井総裁・武藤副総裁は戦略的中間派(委員会の構成の中で極端な立場をとりにくい)、須田・西村は戦術的中間派(預金残高の削減は小手先だと思っていて、金利政策への移行時期を窺っている)と括ることができる。

このような構成のなかでは、量的緩和継続への期待形成については岩田副総裁がキャスティング・ボートを握ることになる。岩田副総裁が動けば山が動く可能性があるのだ。そこで市場も岩田副総裁の15日の講演を注目している。

さて、18面では以下のような記事が書かれている。

『日銀の岩田一政副総裁が都内のシンポジウムで量的緩和の出口について「現在とても近いところまできている」と発言したと伝えられ、海外勢を中心に売りが出たもようだ』

『十二日にも岩田副総裁が八月末の講演で量的緩和の解除に前向きな発言をしていたことが明らかになり長期金利が上昇したばかりだ』

前者は内閣府のシンポジウムであることが5面からわかる。後者はジャクソン・ホール会議での講演であり、その要旨はすでに紹介したように日銀サイトにアップされている。

これだけ岩田副総裁の言動に注目が集まると15日の講演が焦点になる。ここで、先の二つの発言を裏づけすると市場における期待形成がかなり変わる可能性がある。

では、私の憶測を一言二言。第一に、ジャクソン・ホール会議の岩田ペーパーはprice level targetと量的緩和が「歴史依存性」において似ていると指摘したところが興味深いが、その影響は対照的であると思われる。price level targetingという装置は、安定航行装置のようなもので、速度が遅くなると当局は速度をあげなければならず、そうなるだろうという期待を自然に生むという効果がある。量的緩和は、ターボ・エンジンのようなもので、速度が速くなってくるとさらに効果を上げるという効果があるはずであり(市中銀行に必要な準備金額が小さくなってくると、量的緩和が一定でも金融緩和効果がより高まる)、市場にはそういう期待が生まるはずである(どうも生まれていないようだが)。そういう整理からすると、現在はまさにターボがかかり始めている状況かもしれない。

しかし、重要なことは岩田副総裁は政策手段の整理をしているのであって、必ずしも政策手段の発動(変更)に前向きな発言をしているわけではない。但し、2005年末から消費者物価指数がゼロからプラスになってくるだろうという観測が市場にあるところで、それをふまえて量的緩和はターボ効果があるのだと言っているのに過ぎないはずだ。

次に、内閣府シンポジウムの発言であるが、これはまさに2005年末から消費者物価指数がゼロからプラスになってくるだろうという予測の発言ではないかと思われる。これと件の量的緩和解除の三項目、すなわち①CPIがゼロより上になって落ちない、②委員がそういう期待を共有する、③例外もある、と重ねると、①について多少前向きの意見を出しているということになる。ところが、多少皮肉なことが起きている。市場は岩田副総裁がハト派であるから①を超えて②を見ているのかもしれない。ここで、市場とのコミュニケーションにおいても金融政策のキャシティング・ボートを握っているのが岩田副総裁ということになったのである(この事態を福井総裁はどう思うだろうか、グリーンスパンだったらめちゃくちゃ嫌な顔をしているだろう)。

岩田副総裁としては、この与えられた役割を与件として、10月31日の「経済・物価情勢の展望(2005年10月)」を見据えながら、慎重な期待形成が重要になる。10月31日にサプライズが出てしまうと市場が混乱する可能性があるからだ。重要なことは、理論と判断の区分けと周知であろう。特に重要なのは、これからの量的緩和解除のプロセスと金利政策へのプロセスを一貫して段階分けして整理していくことである。その展望はジャクソン・ホール会議講演においてすでに出ている。3項目の確認と、一連のプロセスを丁寧に説明することが9月15日の講演で行われるであろう。

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