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昨日と今日に読んだ本

 昨日は雑用がてらに自宅近くのブック・オフへ立ち寄る。本を三冊買う。一冊目は、『さらば勘九郎』、予想よりは面白い本、細かいエピソードに歌舞伎役者・役者・俳優の世界が想像できる。4年間追いかけた成果はでているように思う。

 二冊目は『市場(スーク)の中の女の子』、第一線の経済理論研究者・ゲーム理論家が書きたかった、第一線の経済学理論の入門書である。入門書であるからといって、第一線の経済学理論が上手に解説されているわけではない。ある特定の光の当て方のスピリットを平易な書き方で体験させる入門書である。<ませた高校生>にちょうど良い。中世のイタリア→アラビアの市場(いちば)社会にタイム・スペース・トリップするところは、二つのことを想起させる。ひとつは、あらためてAvner Greifの「制度」研究。もうひとつは、大野健一による好著『途上国のグローバリゼーション』のp.14における次のような記述である。自分への補助線代わりに書き出しておく。

 国際機関のエコノミストには、各国で市場移行改革を指導しているにもかかわらず、市場経済の歴史的な生成過程はおろか、その定義させも真剣に考えたことがない人がたくさんいるようである。筆者はIMFの複数の幹部職員から、「私が訪れた最貧国でも、村の市場に行けば穀物を売買する商人がいた、国際列車で仕入れに出かける担ぎ屋がいた、だから市場経済はどこにでも存在する」というような議論を聞いた。たしかにバザール、行商人、街道の露天商などは人類史を通じて長く存在してきた。だがそのような小規模で散発的な私的商業活動は市場(いちば)であっても市場経済システムとは呼ばない。少なくとも、われわれがここで議論している市場経済システムではない。終戦直後の日本の闇市に見られたように、インフォーマル・セクターの発生は正常な市場メカニズムの結果というよりも、むしろその機能不全に対する人々の苦肉の自衛策である。人間は食べていかなければならない。中国やロシアがめざすのはそのようなバザール経済ではなかろう。

 最後の本は105円という『近代経済学(第二版)』だ。これは読み通すというわけにはいかないが、ところどころを読んでみると、なんて素晴らしいオーソドックスな教科書なんだろうと思う。ところが、1980年代の後半に大学生としてこの本の第一版を見ていた頃は、この本は全くの悪書だと思っていたのだ。考えてみると、この本は経済学の世界を一括して提示しているという意味で素晴らしい。ところが、現実とのフック(hook)、つまり現実経済との引っ掛りがかなり希薄である。おそらく、そのような現実経済との引っ掛りをガイドブックとして書くのであれば、この本と同じ容量になるであろう。もう少し激しく言うと、この本を読もうというmotivationが本自体に存在していないかもしれない。それは別に著者の問題ではないので、仕方がない。なお興味深いことに『市場の中の女の子』の末尾の参考文献にこの本があがっていた。そういう意味でもスタンダードな本である。

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Comments

こんにちわ。含蓄のあるメモです。私ももう一がんばりすれば、別の経路からここで提起されている問題にちょっとだけ手が届きそうな予感がしますが、まだ難所がいくつかありそうな。。。

以前紹介されていた『金融広告』本、少しずつ読み進めてますが、関連してふと気づいたことを少し。

なんとなく、預金はモノのように時間がたつと少しずつ目減りしていくのが普通、と前提している自分に気づきました。多分、素朴心理学、素朴物理学(進化心理系の用語?)的には「自然」な発想で、バザール経済まではこういう直感を持った人が複数存在することでなんとか行きそうな気がします。市場経済については、吉本さんの本を読んではたと気づいたように、私自身、実はあまりぴんときてないということのような。中世の小商人ぐらいの経済観なのかな?

ますますGreifが気になる今日この頃ですが、こちらの斜面からたどり着くまでもう少し精進しなくては、と思います。

Posted by: YN | 2005.08.14 at 10:00 AM

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