関満博『現場主義の人材育成法』
関 満博『現場主義の人材育成法』(ちくま新書、2005年)である。この本の良さは、船曳 建夫『大学のエスノグラフィティ』と比較することによって非常に顕著になると思われる。どちらも大学教員が自分の身の回りを材料にして、教えることや勉強することについて書いている。しかし、そのスピリットにおいて格段の違いがあるように思われる。どちらが好みかは人によって分かれるだろう。関氏は、私が毎朝つけているラジオに定期的に出演しており、非常に興味深いレポートを毎回行っている。なお、その他の出演者は金子勝、内橋克人、等であり、共通しているのはその「熱さ」である。では、この関氏の本から教育について述べているところを若干抜書きしよう。
結論めいた言い方だが、「常に彼らに関心を寄せていくこと」「彼らを世の中の『先端の現場』に導き、現実の面白みを実感させること」「彼らと全人格的な付き合いを重ねること」、そして当方としては「常に先端に身を置き続けている」ことが不可欠であるように思う。「先端で闘っている少々年上の先輩が、全人格的に付き合ってくれ、自分に関心を寄せている」ことを痛感した若者たちは、確実にエキサイトし、大きな一歩を踏み出すことは間違いない。(p.18)
このように本の最初の段階で記された本は、必然的にその具体例が繰り返し繰り返し語られることになる。それは「現場」での時間をかけた遊興ではない本業(=営み)である。これに対して、エスノグラフィティと書かれた書物たちは、その題が必然的に想起させる映画『アメリカン・グラフィティ』が監督ジョージ・ルーカスによる明確な戦略をもって起死回生を賭けた一発であったことを無視しているような気がする。
「現場」という言葉と「人材育成」という言葉を組み合わせて議論しようとするときに、これからはこの本を参照して議論が行われなければならないスタンダードな本です。
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Comments
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Posted by: sbobet | 2014.11.20 04:33 AM