Paul Seabright, The Company of Strangers
Paul Seabright, The Company of Strangers: A Natural History of Economic Life, (Princeton, 2004)
考え方として見方として、非常に重要な本である。書名を訳してみよう。『見知らぬ人々の集団:経済生活の自然史』。副題である『経済生活の自然史』は「進化の見方から経済をまじめに考える」ということであり、そのパイオニア本として成功している。
経済生活では、お互いに見知らぬ人々が、知らないにも関わらず信用しあって、お互いに分業を行い、生産・消費活動を続けている。それはどのようなメカニズムのもとで可能なのかという課題について、経済学・(自然)人類学・心理学・歴史を総動員して見通しをつけようとしている。答えは、進化の基盤の上での制度としている。「制度」という回答は全く新しいものではないが、それを進化の基盤の上で改めて答え直したのは十分に新しい。
一読(それも飛読だが)してみて、いわゆる一般教養の「経済学」のネタ本として最高であると思う。第一に、博覧強記の教養である。第二に、広い関心を対象としている。第三に、数学がない。第四に、現代人は進化という視点を真面目に考えておく必要がある。
振り返ってみれば、私が受けた一般教養の「経済学」は、具体例のない「資本論に忠実なマルクス経済学」と、一般均衡論批判を行うN先生(その後、深夜議論で活躍)であった。そういうものが、1986年当時に「一般教養」として経済(学)理解に必要だったとは未だに承服することができない。当面のところ、この本もしくはLevitt and DubnerのFreakonomicsが一般教養の「経済学」の見本(もしくは卑近にネタ本)として素晴らしいと思う。
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Comments
仕事の合間に覗いてみました。これは、私も読まなくてはならない本、と直感いたしました。橋を架ける方向はちょうど逆からですけども。橋が増えてそこが大地になるといいな、と思います。
PS:堀内孝雄の演歌への転進、なるほどですが、Smooth Jazzなる新ジャンルを作ったところであちらがひとつ商売上手のような気がします。もちろん、SJにもWest Coast Jazzとか先行ジャンルがあるのでゼロからの立ち上げではないですが。それにしても、SJの人のファッションはダサいに違いない、とつい感じてしまうのはなぜだろう。
Posted by: YN | 2005.06.13 05:35 PM