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日本経済新聞4月1日1面

 2005/04/01の日本経済新聞朝刊一面『V字回復採用前線(上)新卒に過熱感――質も量も、焦る企業』という記事である。おそらく、就職活動で大変な学生にはエイプリル・フールかと思うであろう。このあたりがマクロとミクロの齟齬(そご)なのかもしれない。解説してみよう。

 新卒、中途を問わず企業の採用意欲が急速に高まっている。業績回復で仕事量は増えているが、不況期に人員を絞り込んだため、人手不足感は強まる一方。団塊の世代の定年退職、少子化による学生数減少をにらんで、企業は「優秀な人材を採るのは今」とみている。今年の採用活動は昨年までと一変し、過熱の兆しを見せ始めている。

 たしかに、2002年来の景気回復で労働需要は強まっている。そして、これまでの採用絞込みで中高年世代が仕事場に多く、これからの定年退職を見据えて、仕事場に若手の不足感が強く出ていることも想像できる。

バブル期上回る  青山学院大学(東京都渋谷区)の就職部。関口晃課長は「今年は久しぶりに求人票を持ってくる会社が多い」と語る。新卒採用を見送っていた中堅企業が再開。中途採用だけだった企業が新卒を求める例もある。「企業の採用意欲は例年になく高い」。関口課長は変化を肌で感じる。  学生に対する企業側の情報提供にも熱が入る。東京大学法学部四年の小野昭信さん(仮名)のパソコンには毎日五十通近い会社説明会の案内メールが舞い込む。あまりの量に「読まずに削除することもある」ほどだ。早稲田大学法学部四年の海野恵子さん(同)も「同じ会社から何度もメールが来る」と戸惑う。

そうなのだ。情報提供は非常に充実したものになっていると思う。さてここからがマクロとミクロの乖離だ。

 「二、三月で学生の売り手市場に変わった」。人事制度を専門にするマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングの柴田励司社長は指摘する。リクルートの就職情報サイト「リクナビ」の山辺昌太郎副編集長も「一九八〇年代後半のバブル期以来」とみる。  二〇〇六年度採用計画の本社調査一次集計によると、大卒採用人数は〇五年度に比べ二三・六%増える。伸び率はバブル期を上回る。金融関連を中心に非製造業(二八・七%増)がけん引。製造業も一六・二%増だ。  この十年、中高年対策が人事部最大のテーマだったが、気が付けば社員の年齢構成のゆがみが深刻化。リストラモードを切り替えている。

 重要なことは、学生の売り手市場になったという言葉の意味である。ミクロで就職活動をしている学生にとっての実感は、(1)「ある学生に内定が集中している」なのか、(2)「すべての学生に内定が満遍なく出始めた」なのか、である。おそらくは(1)である。それはなぜか?

 ただ、企業も数合わせで学生を確保する姿勢を改めている。大日本印刷の井戸隆人材開発部長は「優秀な学生は複数の会社から内定を得ている」と語る。企業も学生から選ばれる立場にあるが、「厳選採用の姿勢は変えない」と言う。  技術革新のスピードが高まり、企業を巡る法制度や会計基準も複雑化、「企業が学生に求める資質は高まっている」(山辺リクナビ副編集長)。限られた人材を確保しようと、採用担当者は焦燥感を募らせている。

 こうなのだ。「限られた人材」に内定が集中する。その理由は一般には優秀な学生は数が少ないとという供給側に求められるのであろうが、採用側(需要側)にも理由は求めることはできるであろう。つまり、これまで採用を限定してきたために、その傾向(慣性)が残ってしまうことが予想される。今まで5人を採ろうと思って採用基準を厳しくしていたのに、今年は20人採ることにしても採用基準は緩めない。それでは、一部の「優秀であることがわかりやすい人材」に内定が集中してしまうであろう。
 以上の議論から、教訓は二つある。第一に、今年の就職活動は辛抱強く続けたものに光が見える可能性が高いということだ。企業側も少しずつ採用基準を緩める可能性があるからだ。もしくは、採用活動を通じて「簡単にはその優秀さに気がつきにくい人材」に光が当たる可能性が次第に出てくるからだ。学生側としては、そのときに就職活動をしていない(つまり、就職市場にいない)学生には全くお呼びがかからなくなってしまう。学生にとっては就職活動=一人駅伝のような実感が深まるであろう。第二に、マクロでの就職前線過熱感と、ミクロでの厳しさの違いがあることを認識すべきである。とくに、就職活動に携わる学生を見守る者(大学教員であり、親であり)は、このマクロでの過熱感に対してナイーブに反応せず、論理的に導き出されるミクロでの厳しい実感を想像すべきであろう。
 う~む。

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